ローカル線の旅 南海電気鉄道高野線

更新日時 2011年11月27日

 南海電気鉄道高野線は、大阪府大阪市浪速区の汐見橋駅から和歌山県伊都郡高野町の極楽橋駅までを結ぶ南海電気鉄道の鉄道路線。路線シンボルマークは、高野杉の林をイメージしたもので、ラインカラーは緑。橋本駅 - 鋼索線高野山駅間にはこうや花鉄道という名称を付けて、観光列車「天空」を運行するなど様々な取り組みが行われている。真言宗の霊場高野山への足であり、終点の極楽橋駅からは鋼索線に連絡している。橋本駅 - 極楽橋駅間は山岳路線であり、特に高野下駅以南は50‰の勾配や、制限速度33km/h、半径100m以下の急カーブが続く登山鉄道となっているため、この区間に乗り入れる列車にはズームカーと呼ばれる17m級の2扉中型車両が専用車両として使用されている。山岳区間、とりわけ高野下駅 - 極楽橋駅間においては完全に線路が山の中に入るために、途中にある駅へは幹線道路からすれ違いのできない狭い道路や林道でつながっているが、車で辿り着くには容易でない。各駅の周辺の山間部には民家が数軒しかなく利用客はきわめて少ないが、すべての駅に簡易型の自動改札が完備され、駅員も夜間には無人になるがすべての駅に配置されている。上古沢駅と下古沢駅の間には、鉄道橋としては日本で10箇所だけで供用されているトレッスル橋(全長67.6m、高さ33.4m)があり、南海電鉄が2010年2月25日にみずから設置した観光用の展望デッキと電車の通過時刻を記した時刻表を備え、トレッスル橋を下から見上げられる。展望デッキまでは上古沢駅・下古沢駅から徒歩20分の道のりである。
南海電気鉄道 高野線(こうや花鉄道)
橋本 - 紀伊清水 - 学文路 - 九度山 - 高野下 - 下古沢 - 上古沢 - 紀伊細川 - 紀伊神谷 - 極楽橋
 橋本駅(はしもとえき)は、和歌山県橋本市古佐田一丁目にある、西日本旅客鉄道(JR西日本)・南海電気鉄道の駅。橋本市の代表駅で、JR西日本と南海電気鉄道との共同使用駅である。JRの駅としては駅長が配備された直営駅であり、管理駅として和歌山線の大和二見駅 - 船戸駅間を管理しているほか、構内には橋本運転区の事務所(かつての橋本鉄道部)がある。JR・南海ともに、当駅を通る全営業列車が停車する駅である。南海では、かつて当駅でズームカーほか、多数の列車増解結が行われていた。ズームカーとは主に難波駅 - 高野下駅・極楽橋駅間の直通運転(大運転)を行う列車のことである。しかし、現在では大運転の本数が減り、難波駅 - 当駅間を通勤車両(高野山方面入線不可車両)が往復している。そのため、難波駅 - 当駅間のほとんどの急行は当駅で、当駅 - 高野下駅または極楽橋駅発着の各駅停車と接続している。
 橋本駅構造はJRと南海が同じ駅舎を共有しており、入口から見てJR切符売り場は右側、南海線切符売り場は左側にあったが、バリアフリー化工事によって、JR切符売り場側に南海の仮設売り場が設けられている。改札口には自動改札機が設置されているが、これは南海のもので、PiTaPaやICOCA(南海高野線では使用可能だが、JR和歌山線は使用不可)、スルッとKANSAI各種カードは使えるが、Suicaなどは使用できない。なお、PiTaPaおよびICOCAへの入金は、改札外では南海の窓口またはピンク色券売機で、改札内では南海線ホーム上の窓口で、それぞれ行うことができる。南海高野線は島式1面2線を使用。各ホームへは跨線橋で連絡している。南海側には留置線がある。JR⇔南海の乗り換えの際に、改札口を出てきっぷを買い直す事の無いよう、跨線橋の通路にそれぞれの簡易券売機と簡易自動改札機が設置(2・3番のりばにも簡易自動改札機を設置)されていたが、2011年3月1日にエレベーター付の跨線橋が完成しJR・南海の改札が分離された。JR線ののりかえ改札口が終日無人となる関係で自動改札機と精算機が新たに設置された。また、南海高野線ホームには、特急券発売窓口(運賃精算・ICカードチャージも可)・列車停止位置表示機能の付いたフルカラーLED式行先案内表示機、および極楽橋方面へのワンマン運転用のミラーが設置されている。高野線の多数の折り返し列車があるにもかかわらず、バリアフリーの設備もなく、なおかつ跨線橋が非常に狭い。また毎年8月に行われる「紀ノ川祭」の際には花火の見物客で激しく混雑し、改札制限することもある。
 南海30000系電車(なんかい30000けいでんしゃ)は、南海電気鉄道が1983年(昭和58年)に製造した特急形電車である。高野線の山岳線区直通特急「こうや」に使用していた20000系が製造後20年以上を経過して老朽化したため、同系の代替を目的として、1984年(昭和59年)4月1日から5月20日まで高野山で弘法大師御入定1150年御遠忌大法会が開催されるのを前に、東急車輛製造で4両編成2本(8両)が製造された。20000系は1編成しかなく、検査時には一般車の21000系が代走したほか、冬期には運休していたが、本系列は2編成が製造されたことにより、「こうや」の通年運行が可能となった。31000系の登場後もテレビCMには必ず登場する「高野線のクイーン」である。
南海電気鉄道高野線の橋本1踏切より撮影。
南海電気鉄道高野線の妻橋跨線橋より撮影。
南海電気鉄道高野線の紀ノ川を渡る鉄橋。
南海電気鉄道高野線の橋本3踏切より撮影。
南海電気鉄道高野線の橋本5踏切より撮影。
南海電気鉄道高野線の橋本7踏切より撮影。
南海電気鉄道高野線の橋本8踏切より撮影。
紀伊清水駅(きいしみずえき)は、和歌山県橋本市清水にある、南海電気鉄道高野線の駅。
 紀伊清水駅構造は相対式ホーム2面2線を有する地上駅。ホーム有効長は2扉車4両。駅舎は難波方面行ホーム側の高野山寄りにあり、反対側の高野山方面行ホームへは構内踏切で連絡している。当初はこの駅付近に車両基地を設置する計画だったが、都合により取りやめになり、御幸辻~橋本間に小原田検車区が設置された。橋本駅より極楽橋駅まで、駅名標がオリジナルのものに変更されている。この駅名標は2009年に順次取り付けられたものであり、4ヶ国語対応の案内や、駅の標高などが記してある。
南海電気鉄道高野線の紀伊清水1踏切より撮影。
南海電気鉄道高野線の紀伊清水7踏切より撮影。
南海電気鉄道高野線の紀伊清水12踏切より撮影。
南海電気鉄道高野線の紀伊清水14踏切より撮影。
 学文路駅(かむろえき)は、和歌山県橋本市学文路にある、南海電気鉄道高野線の駅。全国においても難読駅名の1つに挙げられている。
 学文路駅構造は相対式ホーム2面2線を有する地上駅。ホーム有効長は2扉車4両。駅舎は階段を登った先にあり、難波方面行ホーム側の難波寄りに建てられている。反対側の高野山方面行ホームへは構内踏切で連絡している。かつては下りホーム裏手に側線が残されていたが、撤去された。
下りホーム裏手に側線跡と駅ポスターの高野線の写真。
南海電気鉄道高野線の学文路1踏切より撮影。
南海電気鉄道高野線の学文路??踏切より撮影。
 九度山駅(くどやまえき)は、和歌山県伊都郡九度山町にある、南海電気鉄道高野線の駅。高野線はこのあたりから終点極楽橋までが本格的な勾配区間となる。
 九度山駅構造は交換設備を備えた相対式2面2線のホームを持つ駅である。ホーム有効長は2扉車4両。駅舎は難波方面行ホーム側の難波寄りに建てられており、反対側の高野山方面行ホームへは構内踏切で連絡している。なお、のりば番号は設定されていない。また、何れのホームの待合所へ行く際も一旦屋根のない部分に出なければならないため、雨天時の連絡用に傘が用意されている。難波側には保線基地があり、常時保線車両が留置されている。また、難波側にのみ安全側線が設置されている。自動券売機とPiTaPa・ICOCA対応の自動改札機があるが、のりこし精算機はなく、精算の際は駅係員が対応する。また、当駅窓口での定期券の購入はできない。「こうや花鉄道」プロジェクトの一環として、2009年11月14日、橋本方面ホームに「九度山真田花壇」が設置された。木材には和歌山県で育った紀州材を使い、また、「真田幸村ゆかりの地・九度山」にちなんで、「真田幸村と十勇士」のイラストが配された。これに併せて、当駅の駅名標も「こうや花鉄道」独自のものに更新された。
南海電気鉄道高野線の九度山駅 - 高野下駅間の橋梁。
高野下駅(こうやしたえき)は、和歌山県伊都郡九度山町大字椎出にある、南海電気鉄道高野線の駅。
 高野下駅構造は交換設備を備えた島式1面2線のホームを持つ盛土駅である。ホーム有効長は17m車4両分。難波方には事業用車両の留置線があり、西側には昔の貨物ホーム跡が残っている。臨時特急停車駅でもあった。駅舎はホームの東側にあり、ホームとは構内踏切で連絡している。自動券売機は設置されておらず、窓口で乗車券を購入する。また、自動改札機はスルッとKANSAI及びPiTaPaに対応しているものの、開閉式となっていない。トイレは改札外にあり、男女別の水洗式便器が設置されている。「高野下」という駅名から、鋼索線乗り換え駅の極楽橋駅と勘違いして降車する客が後を絶たないため、車内放送や駅構内の掲示物で注意を促している。当駅以南は50‰の急勾配と半径100m以下の急カーブに喘ぐため、極楽橋駅までは10.3kmしかないにも拘らず、最高速度も33km/hまでに抑えられている事から、平均約25分もかかっている。2009年3月、「こうや花鉄道プロジェクト」の一環として、2番線ホームの線路際に花屏風が設置された。当駅には12種類・約790株の花が植えられている。
保線用の車輌。 南海思い出ミュージアム展示品。
 2010年12月8日、「こうや花鉄道プロジェクト」及び高野線全線開通80周年記念事業の一環として、当駅のホームに「南海思い出ミュージアム」が新設された。全国の大手私鉄の駅の中で初の試みである。駅舎の駅名板が昭和初期のデザインに、ホームの駅名標がこうや花鉄道タイプのものにそれぞれ置き換えられた他、展示ツリーと展示ケースが設置された。展示ツリーには、国内外5社の古レールを固定して展示している。また、展示ケースには、レールに固定された犬釘や実際に車両に取り付けられていた社章マークなどを展示している。この他、ホーム上屋に3ヶ所ある古レールを読みやすくするために研磨すると共に、刻印されている内容も表記される様になった。
 南海2300系電車(なんかい2300けいでんしゃ)は、南海電気鉄道に在籍する「ズームカー」の一系列。現在、高野線車両及びズームカーの最新系列となっている。2005年(平成17年)3月31日より営業運転を開始している。高野線の山岳区間である橋本 - 極楽橋間を走行可能な車体長17mの2扉車「ズームカー」である21001系・22001系・2200系の置き換え用として、1990年(平成2年)に2000系が運用を開始した。その後、山岳区間途中駅の乗客の減少により、山岳区間を2両編成単独で運用できる車両の導入が必要となった。そこで、本系列2両編成4本(8両)の導入が決定された。当初はワンマン化・2連化を除いてほとんど2000系と共通化した思想で投入される予定だったが、直前に高野山が世界遺産に登録される事が決まり、それに相応しい新車として投入される事となった。なお、2005年10月以降は運用が少なくなった難波までの直通運転では難波 - 橋本間は2000系と併結して運行し、山岳区間は直通運用・区間運用共単独でワンマン運転を行っている。
南海電気鉄道高野線の高野下駅 - 下古沢駅間の橋梁。
下古沢駅(しもこさわえき)は、和歌山県伊都郡九度山町にある、南海電気鉄道高野線の駅。
 下古沢駅構造は単式1面1線の地平駅。山岳を経由しているため、駅舎とホームは傾斜面上にある。ホーム有効長は2扉車4両。 かつては相対ホーム2面2線の駅であったが、2002年に交換設備が撤去されたため、高野線単線区間では唯一の棒線駅である。現在使用されているのは当時の難波方面行ホームである。電車とホームの間の間隔が比較的広くなっている場所があるので、乗降の際は注意が必要である。なお、構内踏切は旧高野山方面ホーム裏手にあるお墓にお参りする人のために残されている(但し、普段はコーンで塞いでいる)。旧高野山方面ホームは交換設備撤去後もしばらく手付かずの状態であったが、「こうや花鉄道」プロジェクトの一環として、2007年10月から跡地に花屏風が設置された。高野山電気鉄道時代は、高野下方面に車庫もあった。現在、閑散時間帯は無人化されている。また、自動券売機も設置されていないため、無人時間帯に乗車する際には乗車駅証明書を取って乗車し、降車駅で運賃を精算する事になる。なお、開閉式ではないが自動改札機があるため、スルッとKANSAI、PiTaPa、ICOCAの使用は可能である。
 観光列車「天空」:2009年7月3日に運行開始された高野線山岳区間(橋本駅 - 極楽橋駅間)の観光列車「天空」(てんくう)用に2203編成が再改造され、改造車の形式称号・車両番号はモハ2208形2208-モハ2258形2258となった。車両番号の下2桁"08"は橋本の「ハ」を、"58"は高野山の「コーヤ」を表しているとのことである。営業運転は、勾配区間運転時の安全上の理由から、橋本寄りに2300系または2000系の2両編成を自由席車として連結し、4両編成で運転する。
上古沢駅(かみこさわえき)は、和歌山県伊都郡九度山町にある、南海電気鉄道高野線の駅。
 上古沢駅構造は交換設備を備えた相対式2面2線のホームを持つ地平駅である。ホーム有効長は2扉車4両。山岳を経由しているため、ホームは傾斜面上にある。駅舎は難波方面行ホームの高野山寄りにあり、反対側の高野山方面行ホームへは構内踏切で連絡している。なお、のりば番号は設定されていない。 自動券売機はなく、乗車券は窓口で購入する。自動改札機は設置されている。この駅は、子会社の南海ビルサービスが駅業務を受託し、同社から駅員が終日配置されている。
紀伊細川駅(きいほそかわえき)は、和歌山県伊都郡高野町にある、南海電気鉄道高野線の駅。
 紀伊細川駅構造は交換設備を備えた相対式ホーム2面2線の地平駅。ホーム有効長は2扉車4両。のりば番号は設定されていない。山岳を経由しているため、ホームは傾斜面上にある。駅舎は難波方面行きホーム側にある。極楽橋方面行きホームは構内踏切によって結ばれている。 自動券売機が設置されておらず、乗車券は窓口で購入する必要がある。便所は水洗式。また、PiTaPa・ICOCA利用時には係員に申し出る必要がある(このステッカーも貼ってある)。
南海電気鉄道高野線の紀伊細川1踏切より撮影。
紀伊神谷駅(きいかみやえき)は、和歌山県伊都郡高野町にある、南海電気鉄道高野線の駅。
 紀伊神谷駅構造は有人駅。島式ホーム1面2線の地上駅で列車交換が可能。ホーム有効長は2扉車4両。山間の険しい地形のところにあるため、ホームが大きくカーブしていることが特徴である。駅舎は下り線(極楽橋方面行きの線路)側にあり、ホームとは構内踏切で結ばれている。のりば番号は設定されていない。 自動券売機が設置されておらず、乗車券は窓口で購入する。自動改札機はあるが、PiTaPa・ICOCAには対応していないため、常駐の係員に申し出る必要がある。また、その係員が何らかの事情で席を外している間は、備え付けのインターホンを用い、インターホン越しに対応する管理駅員の指示に従う必要がある。
 極楽橋駅(ごくらくばしえき)は、和歌山県伊都郡高野町大字高野山国有林第8林班にある、南海電気鉄道の駅である。駅の標高は538mである。
 極楽橋駅構造は高野線ホームは櫛形3面4線、鋼索線ホームは頭端式2面1線となっている。 汐見橋方には事業用車の留置線と留置線がある。高野線と鋼索線の乗り換えのために作られた駅で、周辺には駅以外の建物が見当たらない。券売機は設置されておらず、乗車券は改札窓口で購入する。改札口および出口は狭くこぢんまりしているが、自動改札機(PiTaPa・ICOCA対応)は設置されている。両線の駅舎は川を挟んで両岸にあり改札内の連絡橋で結ばれている。便所は乗客用が改札内にある男女別の水洗式であり、社員用は改札外にある仮設タイプの汲み取り式となっている。
南海鋼索線(高野山ケーブル)リンク
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